このページでは、私がこれまで行ってきた研究と現在進行中の研究についてご紹介しています(2019年1月現在)。


社会的排斥が個人の認知・感情・行動に及ぼす影響


社会的排斥は、他者から身体的・心理的に距離を置かれることを意味します (Riva & Eck, 2016)。私は社会的排斥が個人・対人関係に及ぼす影響について継続的に研究を行ってきました。研究手法は多岐に渡り、主観・行動指標に着目した社会心理学的手法や、fMRIやERPを用いた認知神経科学的手法、サーモグラフィやカメラを用いた工学的手法についてもチャレンジしています。

これまで、人は些細な排斥手がかりに対しても鋭敏に検出する可能性があること(川本・入戸野・浦, 2011)、社会的排斥の検出に前部帯状回背側部が重要な役割を果たしている可能性(Kawamoto, Onoda, Nakashima, Nittono, Yanmaguchi, & Ura, 2012)、排斥されている最中の認知・感情・動機の様相などを報告しました(Kawamoto, Nittono, & Ura, 2013)。また、排斥された後に表情に対する認知反応が変容し、笑顔に対する表情模倣が増えることを示しました(Kawamoto, Nittono, & Ura, 2014)。

個人差に着目した研究も行っており、拒絶感受性が高い個人は排斥の手がかりに対して過覚醒や防衛的な反応を示すことを明らかにしました(Kawamoto, Nittono, & Ura, 2015)。また、好奇心が旺盛な個人は社会的排斥の悪影響を受けにくいことを報告しました(Kawamoto, Ura, & Hiraki, 2017)。

社会的排斥が引き起こす個人内・個人間過程についてレビュー論文も執筆しました(Kawamoto, Ura, & Nittono, 2015)。社会的排斥は子供にとっても重要なテーマであるため、子供向けの解説論文も執筆しています(Kawamoto, 2017)。他者から排斥されると、排斥された個人は状況を検出・評価し、社会的痛みの制御を行います(個人内過程)。その後、対処行動を行うために、外部環境に対するモニター機能を高めます(個人内過程から個人間過程の移行過程)。個人内で生じた社会的痛みや外部環境のモニタリングをもとに、様々な対処行動が柔軟に選択されることを提案しました。

現在は、社会的排斥によって生じる感情の制御を促す要因の検討や、社会的排斥自体が減る要因について、学生や共同研究者と研究を進めています。

主な共同研究者
伊崎 翼(産業技術総合研究所)

子育て中の親の心理適応・不適応に及ぼす要因の検討


子育てはかけがえのない体験ですが、苦労や困難が伴うこともあります。子育てに伴う心理的な適応や困難について、個人差や媒介要因に着目した検討を進めてきました

これまで、完全主義のうち特に子育ての失敗を恐れる傾向が心理不適応(抑うつや育児ストレス)と関わること、不確実さ不耐性が両者の関係を部分媒介することを示しました(Kawamoto & Furutani, 2018)。また、子育てバーンアウト尺度日本語版を作成し、子育て完全主義が1つのリスク要因であることを示唆しました(Kawamoto, Furutani, & Alimardani, 2018)。

現在は、国際比較研究(IIPB)に参加しており、子育てバーンアウトの文化差について研究を進めています。また、子育てバーンアウトを緩和する要因の検討や子どもに及ぼす影響についても研究を行っています。

主な共同研究者
古谷 嘉一郎(北海学園大学)HP
Alimardani Maryam(Tilburg University)


子どもの認知発達に及ぼす環境・個人差要因


幼児の認知発達について、フィードバック処理や学習に着目した研究を進めています。

これまで、5歳児の成功・失敗の認知処理に親の応援が重要な役割を果たすことを明らかにしました。具体的には、1人で認知課題を行うと成功・失敗が区別して認知処理されないのに対して、親が隣で応援しながら課題を行うと区別して処理されることを示しました。特に、親の応援は成功に対する報酬陽性電位を高めることで成功・失敗が区別されることが示唆されました(Kawamoto & Hiraki, in press)。

現在は、幼児のフィードバック処理に影響を及ぼす環境要因や親の個人差要因に着目した研究を進めています。また、認知処理の発達過程や学習との関連について縦断的な検討を行うことも考えています。

主な共同研究者
開 一夫(東京大学)HP
吉本 廣雅(東京大学)HP
Alimardani Maryam(Tilburg University)


初対面異性の印象形成(スピードデーティング)


初対面異性の印象形成について、スピードデーティング手法を用いた研究を行っています。これまで日本で行われた例が少なく、データを取得している最中です。えり好みのしやすさや、多くの異性から魅力を覚えられる程度について、個人差がどのような影響を及ぼすかを中心に検討を行っています。工学的手法を取り入れることも考えています。

主な共同研究者
相馬 敏彦(広島大学)HP
西村 太志(広島国際大学)
早瀬 良(中部大学)
吉本 廣雅(東京大学)HP


多元的無知を緩和する要因


集団規範に対する自他認知のズレについて研究を進めています。多元的無知は男性の育児休暇といったテーマで生じることが知られており、そのメカニズムなどが明らかにされています(Miyajima & Yamaguchi, 2017; 宮島・山口, 2018)。現在は、多元的無知を低減する要因について学生達の協力を得ながら検討を進めています。

主な共同研究者
宮島 健(西南学院大学)
Alimardani Maryam(Tilburg University)


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